溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
顔を上げた甲斐が、空を見上げた。
「あの夜、一緒に花火を見て綺麗だと笑ったよね」
「ああ」
「でも、私、花火じゃなくても空を見上げても綺麗だねって笑い会える人が傍にいてくれてる」
手すりに置いた指に、輝く指輪を見て甲斐が固まる。
私はそんな甲斐を見上げながら、震える唇で笑う。
「アンタより、幸せになってやるんだから」
惨めな嘘だ。
ジェイドさんとの契約はあと2日。
日本に帰れば、一人っきりの生活になるんだもん。
それでも、弱みを見せたくない私の精一杯の強勢はこれしか無かった。
「お前がそれで幸せになるなら俺は――口出ししないって、口出しできないって思ってた」
すっと甲斐の手が伸びてきて、驚いて下がるよりも早く肩を掴まれてしまう。
「や。離しっ」
「こんな俺が言っても説得力無いかもしんねーけど。止め当た方がいい」
「甲斐、痛い……」
ギリギリと両肩を掴まれて、甲斐と向かい合わせになってしまった。
必死な甲斐の目が怖くて暴れるけれど、ふりほどけない。