溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「うん。ありがとう」
混雑している人込みを掻き分けて、ペンギンの餌やりを見ようと前の方へ進むと、甲斐は私の手を強く握った。
「本当だよ。俺、ジェイドさんがプレイボーイだって話は、社交界中でも有名だし、本当に七帆にはこれ以上あの人に関わるのは止めて欲しい」
「ちょっと」
日本語だったのが幸いしたけど、周りの人からは痴話喧嘩に見られて怪訝そうな顔をされる。
手も痛かったし、仕方なく人も少ない亀が泳いでいるだけの小さな池の淵に座り甲斐の顔を睨みつけた。
「大丈夫よ。ちゃんと7日間って割り切っているもの。私もジェイドさんもその場を乗りきる為に必要な存在だっただけ」
「七日間だけで七帆が忘れられるわけないだろ。お前はそんなに割り切れる訳ないじゃないか」
「でも、そう思わなきゃいけないって私だって自覚しているんだもの」
平行線な私たちの会話に、解決の糸口は見つからない。
放って置いて欲しいのに。
今さら優しくされた方が私だって嫌なのに。