溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

そう言うと、私のワインを持っていた手を強く捉えた。
赤く揺れたのは、きっとワインだけじゃない。

「他の男の香りを付けて帰って来たキミに、その首筋を今すぐ俺の香りで埋め尽くしてしまいたいよ」
「香り?」
「甲斐が付けていた香水の匂いが、ナホにも移っている。何があったかなんて、余裕があるフリをして聞けないけど、今すぐその香りを消したくて狼になるのを我慢しているよ」
ぱっと離された腕が、ピリピリと痛む。
顔は切なく笑っているのに、その切なく微笑む笑顔は私の胸を締めつけた。

「あは、あははは。今日の甲斐は本当に香水がきつかったよね。だから、匂いが移っただけで、本当に何もない、です、よ」

言いながらも、ばかばかしくなる。なんでジェイドさんに言い訳しなきゃいけないのかなって。

言い訳なんてする間柄じゃないのに。

ジェイドさんもすぐに私に合わせてくれればいいのに、言葉を探すように瞳を揺らすから余計に気まずい。
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