溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
バランスよく良い子に取っていた私に、日本語で話しかけて来たのは――専務だの海外企画室長だのどちらで呼ぶか迷う、人。
ねっとりと私を値踏みするように見た後、向こうも次の言葉を迷っているようだった。
「えっと、甲斐の叔父さんですよね」
私が事務の末端だとは分からないはず。
「ああ。私はWKJグループの者だ」
丁寧に名刺を渡されると、どちらの肩書も書かれていて更に混乱してしまう。
一体私に何の用があるんだろう。
「ブラフォード船長に、もっとわが社を売り込みなさい。成功したらキミの昇進と報酬を弾むから――分かっているね?」
「昇進……」
「キミが望めば、何処へでも。そんなに英語も話せるならば海外でも、通訳でもツアーガイドでもわが社のどの部署でも移動できる。まあ、ブラフォード船長の婚約者ならば、どんな地位も興味ないかね?」
この人、私が末端社員だと気づいているし、指輪を見て婚約者だと勘違いしたんだ。
いや、正確には私たちがフリをしているんだから騙されて当然なんだけど。