溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
慌てたせいで、親しい呼び方をしてしまいそうになったけど、専務の腕を掴んで助けてくれたのは甲斐だった。
「甲斐」
「ごめん。俺から謝るから、専務の事は許してくれ」
「甲斐! 貴様」
「結果を出してから契約しよう。まずは一度だけでも仕事が出来るんだから、それを成功してから専属契約すればいいだろ? 美山を巻きこむのはおかしい」
沸騰したヤカン改め、茹でたこみたいになった専務は、仕事云々よりももう、私みたいな小娘が意見したことが気に食わないといった表情になっていた。
私も上手くかわせば良かったのに、ついつい一緒に居られる大事な時間だったからと心に余裕が無かったんだ。
「お前、――この女と確かハワイに行っていたよな。じゃあ何でブラフォード船長に取られているんだ。こんな尻軽に手玉に取られおってお前は――」
「シリガル?」
バットタイミングで現れたジェイドさんは、首を傾げている。
「ナホ、シリガルってどんな意味?」