溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
騙されたことはない。
でも、騙されてる。
そう思いたい。
そう思わなければ、私は馬鹿だからこの気持ちに酔ってしまう。
言う前から、気付いた瞬間から、叶わないと分かりきっているこの思いに。
「デザート取って来る!」
誤魔化しながら、最後まで独り占めしてやる。
それぐらいしか私にはもう一緒に居る時間を楽しくする術はなかったから。
私一人がギクシャクして空回りして、馬鹿みたい。
ジェイドさんは、きっと最後まで優しくしてくれる。
そこで彼は私のエスコートを終え、『さくら』さんの元へ行くのだから。
タルトにパイにロールケーキに苺のケーキ。
並べられたケーキのように、彼の眼の前に沢山あるケーキの一つ。
たまたま倒れ掛かって可哀想だった私を立て直してくれて、誰かに食べて貰えるように形を整えてくれた。
けれど、彼はたった一つ、食べたいケーキを選んで去っていく。
理想のケーキでは無かった。