溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

「大丈夫です。お見苦しい姿を失礼致しました。それより、装飾品と靴を届けに参りました」

すぐにコンシェルジュの顔に戻ったケイリ―さんは、潰れてしまった白い箱を持ちあげようとして、下を向いた時だった。
誰からともなく、小さく『あっ』と声が洩れた。


左足のヒールが折れたハイヒールが、無残にも転がっていたから。


「そんな! あああ、このヒールはジェイド様がこの服にピッタリだと、船内全ての靴を拝見して決めた靴なのに」

ケイリ―さんが、肘を付いて項垂れていた。

真珠とリボンであしらわれた、ゴールドピンクの可愛いヒールだ。

「このブランド……あまり数を量産しないブランドだから、船内にはもうないと思います」
「今年の新作だわ。でも日本に売ってないと思うから、発注だとしてもすぐには無理よね」

従業員さんがざわざわと不安そうな声を上げている。
ケイリーさんも流石に冷静さを保ってはいるけれど、顔色が悪かった。

< 202 / 244 >

この作品をシェア

pagetop