溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「全く」
ふわりと、また抱きしめられる。
彼は私の向きをプールの方へ向き直させ、後ろから抱きしめさてきた。
「靴は俺が同じのを送るから、こっそり変えておくんだよ?」
「はい」
「一曲楽しく踊ってから、ロマンチックに最後を過ごしたかったのにキミは本当に」
「ふふ。すいません」
「わくわくして――本当に退屈しないな」
後ろから抱きしめられて――そのまま引き寄せられて、ジェイドさんの匂いに包まれる。
「Let time stand still this way.」
彼のかすれる様な絞り出した声に、今度はその意味を知る。
『誰か、時をこのままに、そう、動かないままにしておいてくれないか。
いっそのこと、このまま永遠に時間を止めて』
時間を止めて――。
本当に止まればいいのに。
偽りでも、ずっと傍に居たくて胸が苦しいんだもの。