溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
「彼は、私たちの希望です。沈没する豪華客船の中を彼が走り回り、救助し続け最後まで諦めなかったから今の私たちがあります。――だから彼はその期待に応えようと自らの幸せを後回しです」
「そう、ですよね。いつも他の人のことばかり」
「だから、貴方と居るジェイドさんは、無邪気で素に近い姿で私は嬉しいです」
向かい合わせで座ると、ケイリ―さんはにこやかにほほ笑む。深く刻まれた皺が、優しく動くと何だかとても安心できた。
「どうか、貴方が気に病むことは何もないので、七日間楽しんで下さい。楽しんで頂ければ、本当にそれだけで私は嬉しいのですよ」
「でも、日本の会社が彼の休暇を邪魔しちゃっているし」
「いえいえ。そこまで美山さまが気にかけることはありません」
「……でも、私の高校からの知人の親の会社でして……」
一瞬、甲斐は元カレという位置になるのかと悩んだけど、数日間だけ現実から逃げるために利用された感じも否めなかった。
だから、それは言いたくなくて、知人で手を打つ。