君と花を愛でながら
「戻ってきて綾ちゃんがまだ一人でぼやぼやしてたら、今度こそ押し倒すから」
「無理やりキスはしたくせに……」
「無理やりじゃない、あれは不意打ちっていうの」
「同じじゃないんですか……」
軽口を叩きながら、デコピンされた額を撫でる。
そうか、あれが無理やりじゃないのなら。
私がマスターにしてしまったあれも、不意打ちということで許されるのかな。
滲んだ涙が冷やされて、目の回りがピリピリ痛い。
ずずっと鼻を啜った私に、片山さんがひらひらと手を振った。
「専門学校、頑張って。早く家入りなよ風邪ひくからさ」
「はい、片山さんも。今までお世話になりました」
「不毛な恋愛も頑張って」
「不毛って言わないでくださいよ!」
最後に言い返した言葉は彼が窓を閉めてしまったのと同時だったから、聞こえたかどうかはわからない。