タイガーハート


『ことら…っ』
伏見が声を発した時、声がする。



『司会の伏見さん知らない?

見当たらなくって…』

伏見を探す声。
おそらく、もう一人の司会者の男子生徒だ。

顔を上げ、伏見を見る。

『あ、あたし…、行かなきゃ…』

暗いステージ袖。
それでも目の前にいる伏見の顔が真っ赤に染まっている事は一目瞭然だった。

ウブな伏見を困らせている。

そっと幕から手を放すと、
もう一度、顔を覗き込む。

「大丈夫、お前らしくやれ。


がんばれよ」


そう告げると、踵を返す。

『あ!伏見さん!いたいた!』

後ろから声がする。

< 79 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop