俺様御曹司の悩殺プロポーズ
エンジンが切られ、
「ここからは隠れなくてもいい。普通にしていろ」
と言われた。
その理由は、車から下りるとすぐにわかった。
ここは都会ではなく、結構な田舎町。
高い建物は電力会社の鉄塔くらいしかない。
住宅地にポコポコと穴が開いたように畑が点在し、通行人は見渡す限りいなかった。
「ここはどこですか?」
と尋ねると、
「東京の端」という答えが返ってきた。
ふーん。東京にも田舎ってあるんだね。
隅々までビルが建ち並んでいるのかと、勘違いしていたよ。
空はうっすら赤みを帯びて、時刻は夕暮れ時に入っていた。
車を止めた場所は砂利のひかれた駐車場で、
風原さんの車以外に、一台だけ車が止められていた。
駐車場の向こうには小さな庭園があり、その奥に、
白漆喰いの壁と赤茶色の屋根瓦の、平屋の建物が見えた。
『ル・ヴァン』と看板を掲げたこのお店は、南フランス風の建物。
ランプみたいなポーチライトや木目のドアが素朴で、西洋の田舎を感じさせる雰囲気だ。
風原さんが連れて来てくれたお店が、こんな所なんて……。