俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


目をぱちくりさせて、目の前の建物を見つめていた。



「どうした? 高級な店じゃないから、不満なのか?」



何の感想も口にせず、ただ眺めていると、そう聞かれてしまった。



不満はない。


この素朴な建物と風原さんのイメージが結び付かなくて、少し戸惑っただけ。


むしろ私には、敷居の高いお店よりこっちの方が素敵に思える。



夕日を浴びる白漆喰の壁に緑のツタが這い、門はアーチ型。

こじんまりとして可愛くて、温かみのあるお店に、早く入りたくなった。



そんな感想を伝えると、風原さんは、


「良かった。お前の趣味に合いそうな気がして、ここに連れて来たんだ」


そう言って、柔らかく笑った。



夕日を浴びるその微笑みに、心臓がドキンと大きな音を立てた。


その後は鼓動が勝手に速度を上げていくから、静めなければと焦ってしまう。



うん、気のせい、気のせい。


イケメンが夕日を浴びて笑顔を見せれば、女子ならみんな、こんな反応になる。


大丈夫、私はときめいてなどいないから……。




アーチ型の門を潜り、ドア前に立つと、CLOSEの札が掛かっていた。



「風原さん、お店やってないみたいですよ?」



「ああ。今日は定休日なんだ。
だから、貸し切り」




彼は躊躇いなくドアを開け、その中に私の背中をそっと押して、いざなった。



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