俺様御曹司の悩殺プロポーズ
「風原さん、あの……」
それから私はトイレに逃げて、
真っ赤に染まった顔と、酷使した心臓を休憩させてから、彼のもとに戻った。
私がどんな想いでトイレに行ったかなんて、恐らく風原さんはわかっていない。
4人掛けのテーブル席で、頬杖ついて待っていた彼は、
ヘラヘラ戻った私に「遅い」と文句を言う。
20分も籠もれば確かに遅いけど、一応女の私にトイレの長さを指摘するなんて……。
表向きの彼なら絶対に言わないであろう、その台詞。
でもそのお陰で、私もいつもの調子を取り戻すことができた。
私が席に着くと、青い目のコックさんがやってきて、テーブルに料理の皿を並べて行く。
「注文してくれたんですか?」
そう、風原さんに尋ねると、
「いや。ここに来たら、いつも勝手に料理が出てくる」
そんな答えが返ってきた。
季節野菜のラタトゥイユ、ひよこ豆のスープ、鱈のブーリッドゥ、子羊のフリカッセ……
南フランスの料理名は覚えられそうにないけれど、
どれも美味しくて、何度も食べに来たくなる優しい味がした。
お腹も空いていたので、パンをお代わりして夢中でペロリと完食した私。
最後に出されたアップルパイは、隙間のなくなった胃袋に無理やり詰め込んだ。