俺様御曹司の悩殺プロポーズ
中村アナは昼前に会話した時と同じ、優しい笑みを浮かべていた。
中に入ってこちらに歩み寄り、2メートル離れた位置で足を止めた。
「風原さん、日野さん、お疲れ様です。
私のパソコンに届いた社内メールを見て来たのですが、これは一体何の呼び出しでしょうか?」
「中村さん、ご足労いただき感謝します。
お呼び出てした理由はメールに書いたつもりでしたが、読みませんでしたか?」
「読みましたよ。ですが、さっぱりわかりません。
嫌がらせの犯人と言われましても、全く身に覚えのないこと。
今ここに日野さんが同席しているということは、
嫌がらせを受けているのは、日野さんなのですか?
そして、私がその犯人だと思われている……そう理解しても宜しいのでしょうか?」
笑顔を崩さずに、自分に掛けられた疑いについて話す中村アナ。
風原さんも表向きの爽やかな笑顔を浮かべたまま、こんな返しをしていた。
「その通りですよ、中村さん。
“全く身に覚えのないこと”という箇所以外は合っています」
正面に立つ中村アナの顔を見てから、隣に立つ風原さんの顔を見上げて……、
掴んでいたスーツの袖をパッと離してしまった。
怖い……。
二人とも、笑顔がものすごく怖い……。
丁寧すぎる口調も、怖い。
怒鳴り合うのとは違った静かな戦いに、冷や汗が背中を伝って流れ落ちた。