俺様御曹司の悩殺プロポーズ
ひ、ひどい……。
忘年会は久しぶりの飲み会で、私だって楽しみたいのに、そんな自己中心的な理由で帰らせるなんて……。
風原さんは問答無用で私の手に、一万円札を握らせた。
それから落ちていたバッグを拾って持たせると、強引に私の体を反転させる。
細い通路の先にネオンの光と、黒い個人タクシーの車体の一部が見えていた。
「あのタクシーだ。お前の名前で呼んである。
寄り道しないで、まっすぐに帰れよ」
背中をトンと押されて、渋々タクシーに向けて歩き出す。
「日野です」と名前を告げて乗り込んでからも、ムッとしていた。
私は大人としての何かが足りないのだろうか?
『寄り道しないでまっすぐ帰れ』って……子供扱いされた気分。
夜の繁華街をタクシーはゆっくりと走っていた。
運転手の男性は寡黙な人で、小さく流れるラジオの音がよく聞こえてきた。
『FMラジオ、ワンダフルトゥナイト。DJの玉山玉夫です。
金曜の夜をみなさんいかがお過ごしでしょうか?忘年会シーズンですから、まさに今、飲んでまーす!という方もいるのではないでしょうかーー』
ラジオのDJの問いかけに、「私は忘年会から強制送還中です」と心で答える。