俺様御曹司の悩殺プロポーズ
風原さんと女将さんが話をしている間に、車は作務衣姿の男性が運転して、どこかへ移動させていた。
荷物は中居さんが両手に抱えて、建物の中へと運び入れてくれている。
この旅館は平屋の純和風の造りで、広い間口の立派な玄関で靴を脱ぎ、和柄のスリッパに足を通した。
庶民感覚の私は脱いだ靴を手に持ち、つい靴箱を探してしまう。
あれ?靴箱がない。
どこに仕舞えばいいのかな?
すると女将さんに「お履物はどうぞそのままで」と言われ、風原さんにプッと吹き出し笑いをされてしまう。
またしても、失敗してしまった……。
見るからに高級そうな旅館だもの、自分でやらなくても何から何まで全部やってくれるんだね……。
「案内はいりません」と風原さんは断って、勝手知ったる雰囲気で廊下の奥へと歩き出した。
「ごゆるり、おくつろぎ下さいませ」
女将さんは風原さんの背中に深々と頭を下げ、私は彼の背中を追いかけた。
館内は旅館と言うより、お宿と言いたくなる雰囲気。
柱も床も天井も築年数がかなり経っていそうに古いけど、丁寧に磨き上げられて光沢を放ち、いい味が出ている。
廊下の角には趣味の良い生け花や茶器が飾られ、目を楽しませてくれた。
それらを見ながら歩いて行くと、なぜか行き着いた先はまた玄関だった。