俺様御曹司の悩殺プロポーズ
おじいちゃんが骨董市で1990円で買ってきて、おばあちゃんに「まぁた、いらんもん買ってきて!」と怒られていた。
そんな昔の出来事を思い出して、何気なく掛け軸に触れようと手を伸ばしたら……。
「おい、それには触れるな」
風原さんにそう言われた。
彼は本間の座卓に向かって、あぐらをかいてくつろぎ体制。
開けたままの襖から私の行動を見ていて、注意してくれた。
「それは張白石の夫婦滝昇鯉図。
一千万円近い代物だ」
一千万⁉︎
伸ばした手を慌てて引っ込めて、ズササッと後ずさる。
そこに「失礼します」と玄関の方から女将さんの声がして、本間の襖が開いた音も聞こえた。
怒られたわけじゃないけれど「掛け軸には触ってませんから!」と心で言い訳し、慌てて本間に戻った。
女将さんは入り口に正座して、三つ指立ててお辞儀をしている。
「お夕食の準備をさせていただきますね」
その言葉に続いて入ってきたのは、和食料理人風の出で立ちの男性。
料理を次々と運び入れ、テーブルの上はたちまち豪華な和食懐石で埋め尽くされた。