俺様御曹司の悩殺プロポーズ
家族や村のみんなの顔が浮かんで、しみじみしていたら、斎藤部長がおかしなことを言った。
「おう。そんじゃ頑張ってこいな。
東京で、できるだけ北海道をアピールしてこいよ」
ほ? 東京……?
なぜに東京?
私は北海道放送局の女子アナだよ?
突然振られたそのワードに目をパチクリさせていると、こんな説明をされた。
新しいテレビの仕事とは、“桜テレビ北海道"の親玉的存在の、
“桜テレビ東京本社"の年末特別番組だった。
系列局の地方女子アナ達を集めて、面白おかしいバラエティ特番をやるらしい。
それに私を出演させると言うのだ。
やる気も期待も、途端にヘナヘナと萎れていった。
東京は嫌。
だって……東京って怖い。
華やかで優秀な東京の女子アナさんと並んだら、
私なんか、ミジンコかゾウリムシに見えてしまうことだろう。
もしくは、牛に踏まれた蛙か、はたまた深海魚か。
惨めな思いをしそうなので、東京なんて行きたくない。
その特番に出演するのが、なぜ私なのかもわからない。
一つ上の先輩アナウンサー美紀さんや、三つ年上のアナウンサー里美さんの方が、テレビ映えする綺麗な顔をしているし、
女子アナとしての能力だって、私なんかよりずっと上で……。