俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


前置きだけならまだしも、

そんな聞き苦しい喋り方で、天気予報を読まれては困ってしまう。



聞き取れず、今日の天気は晴れなの?雨なの?と、視聴者は首を傾げることだろう。



救いを求めてディレクターを見ていると、

彼はスケッチブックに何かを書きなぐり、それを私に見せて、必死に何かを訴えていた。



出されたカンペには、こう書かれていた。



『カメラを一瞬桜に向けるから、雨雲のマイクのスイッチをオフにして、原稿を奪え!

続き全て、日野が読め!』



ま、マジで!?

と言いたいが、異論を唱えている暇などなかった。



ディレクターの手の合図と同時にカメラが雨雲君から外れて、桜の木に向けられた。



私も慌てて動く。


震える雨雲君の紺色ジャケットを捲り、

ズボンのベルトに付けられているピンマイクの本体スイッチを、手早くオフにした。



そして、驚く彼の手から原稿を引ったくると、

カメラが桜から私に戻ると同時に、続きを読み始めた。



「失礼しました。全国のお天気をお伝えします。

まずは名古屋から西の地方です。

午前中、雲の広がる時間帯がありますが、雨の心配はないでしょう。

風は弱く、暖かい見込みです。

午後からは――」




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