俺様御曹司の悩殺プロポーズ
カメラには笑顔を向けているけど、心の内は必死だった。
どうせ私はちょい役だと、のん気にしていたところからの、重要な仕事。
準備不足と言って、逃げるわけにも行かず、
モーニング・ウインド初日に泥を塗らないよう、私が何とかしなければ!という思いだった。
カメラは私だけを映していて、
フレームアウトした雨雲君は、スタッフに襟首掴まれ、建物の中に引きずられて行った。
私は全神経を、原稿に集中させている。
打ち合わせで目を通していたので、初見の原稿ではないけれど、
自分の読む箇所以外は、暗記が不十分。
つい、手元の紙ばかりに視線を止めてしまったが、
その時頭に流れてきたのは、さっきまで厳しく指導してくれた風原さんの声だった。
『下ばかり見るな……VTRに合わせる気がないのか……』
その声にハッとして、前を向いた。
カメラの下にあるモニターには、私を背景にしたお天気図が表示されていた。
天気予報にVTRはないけれど、天気図、気温、週間予報と、テロップは変化して行くので、
アナウンスと画面にずれがないか、確認しながら読まなければ……。
手元を見て前を見て、懸命に天気予報を読み上げていた。
すると頭の中に、また風原さんの声が聞こえた。