甘やかな螺旋のゆりかご
コトリと、テーブルにホットミルクが注がれたカップが置かれた。
「ごめんね。悲しい顔をさせて。でも、この家を滅茶苦茶にはしないから、安心して」
あたしは、今そんな顔をしてしまっているんだろうか。でも、あたしはそれが心配よりも、お姉ちゃんのほうが。
お姉ちゃんは、あたしが知っていると知ってしまってから、少し痩せたような気がする。元々線の細いお姉ちゃんの肩は、もっと儚げになった。
「違うよ、お姉ちゃん。あたしは、お姉ちゃんが心配なの。いつか壊れてしまわない?あたしはお姉ちゃんが悲しむ原因のひとつじゃないかな?」
そうだったら、昔のあたしを殺してやりたい。そんなふうに、お姉ちゃんを追いつめる気はなかった。
声が、震えてしまったことを後悔する。絶対に涙しないお姉ちゃんの前では、あたしも絶対に泣かない。でも……。
「そんなこと、あるわけないじゃない」
カップを握りしめたまま動かなかったあたしの手を、お姉ちゃんは包み込んでくれた。
「ホント、に……?」
「本当に。――妹に便乗して妹を利用して、好きな人にチョコを渡せたわたしが、あなたに軽蔑されることはあっても、わたしがあなたを嫌いになるはずがないでしょ」
あなたはわたしの宝物よ。あなたがいてくれて救われている――お姉ちゃんは、あたしに言ってくれた。