あと少しの恋
「時と場合による」
「鈴のマンションかな」
「おまえ動くなよ?」
「痛い痛いのはマジ勘弁だからな?」
束の間、電話を切るが早いか目の前には鬼の形相の由貴がいた
「マジ?」
「希瀬」
冷静なさざ波のような言葉
でも言葉とは裏腹な由貴がいる
「やっばいかも」
「何発いれりゃあいい?」
俺はタバコの火を消すとにやりと笑う
「来いよ相手になってやる雑魚野郎」
「おまえガキの頃、勝ったことないだろ俺に」
「やめましょう希瀬さんも由貴さんも」
「鈴」
2人の声がそろったのでつい笑ってしまう
「希瀬さんも由貴さんも大好きですから」
「それ反則だろ」
由貴さんも頷くけどどちらかなんて私には選べない
「鈴」
「由貴さん」
「ったくわあったよ出てけばいいんだろ出てけば」
希瀬さんはタバコに火をつけると玄関の方に向かってしまう
私は慌てて背中にとびつこうとした
「鈴ついてくんな」
わかってるけどそんなに怒鳴らなくても
由貴さんに抱き止められ私は立ち止まる
「どうして仲良くしてくれないんですか」
「あの日···」
ぽつりと由貴さんが話しだす
「えっ···」
「先に裏切ったのは希瀬だ」
「はあ?おまえだろが由貴」
だんと壁を殴りつける希瀬さん
「おまえはなにもわからないガキなんだよ
いつもいつも俺から大切なものを奪っていく
母さんのこともおまえは振り返りもしなかった」
「どうせ俺は売体の子だよ」
「希瀬なんでわかろうとしないんだよ」
「わかってないのはあんただろ由貴」
「ちょっといいかげんにしてください
落ちつきましょう夜だし
うちけっこう壁薄いんですよ」
ちっと舌打ちの音が聞こえる希瀬さんだ
由貴さんはため息をついている
「長くなりそうだ買い物に行ってくる」
「タバコ」
ぶっきらぼうに希瀬さんが由貴さんに言う
「私もついていこうかな」
「おまえはここに居ろ」
「ですよね」
私はため息をついて希瀬さんにつきあうことに決めた
「おまえさ本当はどうなわけ?」
「えっと」
「あ~もういい」
ぐしゃっと髪を撫でる希瀬さん
本当に子供っぽいんだな
「タバコ買ってきますよ」
「俺といたくないわけ?」
「そういうわけじゃないんですけど」
会話がみつからない
「体と心は裏腹だな」
タバコがないと落ちつかないのか始終あたりを気にしている
「希瀬さん」
「なんだよ?」
「なんでもないです」
「俺をどうしたいんだよおまえ」
「由貴さんと仲良くしてほしいです」
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