あと少しの恋
「どうした?」
「別になんでもないです
私、帰りますね」
「今日は妙に素直だな」
「だって風邪うつしたら大変ですから」
つい口が滑ってしまった
「無理させたな」
「別に気にしないでください」
「気にするだろ普通」
「希瀬さんって誰にでも愛想良くしちゃうんですね」
「別に」
「好きって言ったら怒りますか?」
「さあ」
「希瀬さん狡いです」
「かもな」
好きって言うだけじゃ希瀬さんには物足りないんだ
「退院したら行きたいお店があるんです」
「おまえさ勘違いだよ」
「えっ···?」
「俺は答えてない」
つまり希瀬さんが好きなのは私じゃないってこと??
「やっぱりダメですか?」
「ダメじゃなくて大切にしたいとおまえの言う愛してほしいは少し違うんじゃないか
おまえいつか言ったよな?
したいだけならって」
「私そんなに粗相悪くありません」
「ただの例えだ」
希瀬さんは幾つなんだろう?
私より年上にも年下にもみえる不思議
「たぶん今ここで抱いてやったらおまえはどう思う?」
場慣れした大人の希瀬さん
「イヤです」
「わがままだな」
「私はそんなに良心がないように見えますか?」
希瀬さんは軽く笑って言う
「さあな」
希瀬さんは逃げる言葉を知っている
これ以上、一緒にいても無駄だと思い私は病室を出た
「鈴?」
顔をあげた先に由貴さんがいた
どうにもこうにも気まずい雰囲気
「ごめんなさい」
何も言わないつもりだったけどけっきょくそれだけ言ってその場を去ろうとした
「待てよ、勝手すぎるだろ
希瀬になに言われたか知らないけど辛そうだよ?
そんな顔みてたくない
鈴、俺じゃ役にたてないか?」
このままズルズルと由貴さんの優しさに甘えれたらどんなにいいか
「ごめんなさい」
「なあ待てよ」
手首を掴まれ振り返る
「放してください」
「希瀬は鈴をみてない」
「たとえそうでも納得するまで
自分が納得するまでやり続けたいんです」
「わかった」
口ではそう言ったものの許せなかった
病室のドアを乱暴に開け希瀬につかみかかってベッドから転がり落ち点滴スタンドが派手に音をたてる
気づいた時には希瀬を殴っていた
希瀬は立ちあがると俺に殴りかかってきた
「なんのつもりだよ」
「鈴を泣かすな」
「はあ?」
「希瀬、俺がひいてやったのにおまえどういうつもりだよ」
あまりの怒声に看護師が慌てて入ってきた
「ちょっとなにしてるんですか」
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