艶麗な夜華
「ありがとう……送ってくれて……」



アパートの前に着き、


ドアに手を掛けると恭也の顔を見る。



「なんだよ。早く行け」



やっぱり恭也があたしに優しい笑顔を見せてくれる筈もなく、


車を降りると走ってアパートの階段を駆け上った。




胸が痛くて苦しくて、


部屋に入ると冷たいベッドに潜り込む。





うるさい冷蔵庫の音。


つかないテレビ。


灯油の入っていないストーブ。


能天気な翔。


上手くいかない夜の仕事での人間関係。


クタクタの体。


愛華の言葉。



そのどれもが憂鬱でしかなかったけど、


今、あたしに憂鬱を与えているのは、


百合花さんに優しくほほ笑む、


あたしの知らない恭也だった。








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