センチメンタル・スウィングス
それを見越していたのか、彼は私の手ごと、グラスを持ってくれた。

「・・・やっぱり慣れてる」
「何が?」と和泉さんは言いながら、私からグラスを取り上げると、ミネラルウォーターを注いでくれた。

「驚かすのとか、くつろがせることとか・・いろいろ、です。すいません、起こしちゃって」
「いいよ。枕が変わると眠れないのか?」
「いえ」
「うなされるのはしょっちゅう?」
「・・・時々。あの、和泉さん。私もう帰ります。ご迷惑かけてすみません。そして、ありがとうございました」

グラスを洗いながら、早口にそう言いきった私の腕を、通り過ぎ様に和泉さんが掴んだ。

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