センチメンタル・スウィングス

「帰さないよ」
「帰ります」
「こんな遅い時間に帰るとかなぁ。俺が許すわけないだろ」
「あなたに許してもらわなくても、私が帰るって言ってるんだから、帰ります！それに、こんなに遅い時間だったら、沢村さんだって張り込んでたり、後つけたりしない・・・でしょ」

不意に抱き寄せられたと思った次の瞬間には、和泉さんからキスされた。
それは、軽く唇が触れあう程度のキスだったけど、私をドキリとさせるには、十分な威力があった。

「帰るな、桃子」
「私は・・・」
「おまえはひとりじゃない。俺がいる。俺にもっと愛してほしいか？」
「そんなこと・・・軽々しく私に言わないでよ！他の女友だちにも言ってるんでしょ！」
「じゃー、どう言えばおまえは納得する」
「・・・何も」と私が呟くと、意外にも和泉さんはフッと笑った。