センチメンタル・スウィングス

・・・ああいう、軽く優しく、適度になれなれしい声で、ドキッとするようなことをサラッと言ってるのを聞いてしまうと、やっぱり私は、彼にとって大勢いる「知り合いの女」のひとりで、その中でも私は、少しだけ親密度が濃くなった位置にいる女だと思ってしまう。

それがなぜ不服だと思うんだろう。
スマホの向こうにいる彼女に向かって、屈託のない笑顔を向けている彼を見ると・・・なぜ心が傷ついたと思ってしまうんだろう。

それはたぶん、私たちが思う「情熱」の意味とか度合が、違うからかもしれない。
だから、和泉さんは私の心をドキドキさせるけど、私は彼を、そこまでドキドキさせることができないのかもしれない。

こんなの・・・私が思う「ロマンチックな恋愛」じゃない。
もしこれが、和泉さんが思う「ロマンチックな恋愛」なら・・・私たちの思いは、永遠に交ざり合うことがないだろう。
だったら、一部だけ交ざっている今のうちに・・・。

私は何度目かの寝返りを打つと、「もう寝よ」と呟いた。