らぶ・すいっち
初めはなのことかと思ったが、きっと今日のダメダメぶりを見て、励ましてくれたのだろう。
申し訳なくて「今日はすみませんでした」と頭を下げる私に、慌てるおば樣たち。
「違うのよ」とか、「そうじゃなくて!」と言って、なんだか取り繕っている様子だ。
どういうことだろうと呆気にとられていた私に、今日の臨時講師である英子先生から声がかかった。
「須藤さん、少しいいかしら?」
「あ、はい」
私が返事をすると、土曜メンバーのおば樣たちが手を振り、慌てて教室を出て行く。
なんだかその様子は、そそくさと逃げるようで妙におかしい。
おば樣たちの煮え切らない態度に私は首を捻ったが、再び英子先生に呼ばれたので、おば樣たちの後ろ姿を見送ったあと、英子先生の元へと急いだ。
後片付けも終わり、授業は無事終了した。無事と言っても、私は無事ではなかったけど。
ひとり心の中でダメだしをする私に、英子先生はいつもの穏やかな笑みを浮かべていた。
藍色のお着物に、白の割烹着。貫禄すら感じる英子先生は、やっぱりいつも優しい笑みを浮かべていてステキな人だ。
私も英子先生のように、ステキな年の取り方をしたいと願うほど、英子先生は凛としていて尊敬してしまう。
いつものようにニコニコと笑みを絶やさない英子先生につられて、私も自然と笑みを浮かべてしまう。
ズンと落ち込んでいる私なのに、英子先生の傍にいるだけで心が落ち着いてくる。
「英子先生、何かご用でしょうか?」
もしかしたら今日のレッスンに力が入っていなかったことを指摘されるのかもしれない。
申し訳なくて謝ろうとした私に、英子先生は首を横に振った。