らぶ・すいっち





「ええ、お久しぶりです。実は彼女を口説いている最中でして、ここはひとつ食べ物で釣ろうかと」
「ははは!! 美馬くんのそんな表情初めてみるな。よし、彼女がお前に落ちるよう、とびっきりの料理を出してやる」
「期待しています」
「でも、俺の料理より美馬君が料理を振る舞った方がいいんじゃないか? 厨房貸してやるから美馬君が彼女をもてなせよ」


 店主はニヤニヤ笑いながら順平先生を小突くと、先生は先生で至極まじめな表情になって苦言した。


「ダメですよ。それじゃあ、私が彼女を口説き落とす時間がなくなる」
「おお? 料理で落とすっていう手もあるんじゃないか? それぐらい出来るだろう? 美馬先生」


 プッと噴き出しながら肩を震わせる店主に、順平先生はフッと色っぽく笑った。


「それはまた後日。今日は彼女の傍から離れたくないので」
「おお! 言い切ったな」


 がははと豪快に笑うと、店主は私の方を向き直った。


「美馬くんとの付き合いは長いが、女に関しては淡泊でね。それが今、余裕がないほどに彼女ちゃんに夢中らしい」
「っ……!」


 絶句する私に、店主はニシシと意味ありげに笑う。


「美馬順平の恐ろしさ、もう体験中じゃないのかな?」


 何故ソレを知っているんだ、店主さん。
 私の顔色を見て確認したらしく、店主は肩をふるわせながら厨房に入る。そしてカウンター越しから席を指さした。


「さぁ、ここに座ってくれ。今、飲み物を出すから。何がいいかな? 美馬君は運転があるからノンアルコールがいいだろう?」
「そうですね。でも彼女はアルコールでお願いします」


 順平先生が飲まないのに私が飲むわけにはいかない。
 慌てて「私もノンアルコールで」とお願いしたのだが、そんな私を見た順平先生は悪魔みたいに恐ろしい笑みを浮かべて笑う。


「酔っ払ってしまえば好都合。そのままお持ち帰りするつもりなので、アルコール度が高い酒をよろしくお願いします」
「順平先生!」



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