らぶ・すいっち
* * * * *
「そういえば、さっき……先生は変なことを言っていましたよね?」
「変なこと……とは?」
はて、と首を傾げる順平先生に、私は鼻息荒く追求する。
身体を起こして先生の身体を揺すろうとしたのだが、身体に巻き付けてあったシーツが落ちてしまった。
慌ててシーツを胸元まで上げる私に、順平先生は余裕の笑みだ。
「隠さなくてもいいのに。さきほど君のすべてを見せてもらったんだから」
「ぎゃぁぁぁーー!」
そういうことを真顔で言わないでほしい。恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだ。
恥ずかしいからやめて、とシーツに顔を隠して懇願するのだが、順平先生はどこ吹く風。
何も恥ずかしくない、と言い放った。
これだからイケメンでモテる男は困る。あらゆるところで上級者テクニックを使うところがいけ好かない。
プリリと頬を膨らませ視線を逸らすと、そのまま順平先生の腕の中に抱き込まれてしまった。
「須藤さんの髪の毛は黒くて艶々していてキレイだ……手触りもいい」
「っ!」
「この前百貨店に行って、君に口紅を選んでもらったときに思った。キレイなあの黒髪を自分の手で解いてみたいと。今日は念願が叶いました」
何度も私の髪を手で掬いながら嬉しそうに笑う順平先生。私は恥ずかしくてただ縮こまるだけだ。
「よくよく考えれば、私は最初から君に興味は持っていたんです」
「え?」
「君がクッキングスクールに入りたいと申込書を書いているとき、私はかなり意地悪なことを言いましたが……それに反応する須藤さんの顔と声がずっと頭から離れなかった」
初めて顔を合わせたあの日を思い浮かべているのだろう。順平先生の口元が優しく弧を描いた。
「そのうち、クセがある土曜メンバーの皆さんにも気に入られていく君を見ているのが楽しくなった。私が時折意地悪なことを言って気をひこうとするのは、貴女が好きだったからなんですよ」
「順平先生」
「ほら、英子先生と土曜クラスの皆さんは私の味方だと話したでしょう。彼女たちに、君がいない場所であれこれダメだしをされていましたから」
驚く私に、順平先生はプッと噴き出して笑う。