それは、一度終わった恋[完]
――ああ、そっか、もしかしたら、どっちも悪くなくても、こうやってごめんごめんと言いあって、抱きしめあうことが、もしかしたら正解だったのかもしれない。
彼の肩に涙のシミのあとがいくつもできる。
言ってもどうしようもないことを言ったら、あなたとの距離がこんなにも近くなるなんて、知らなかった。
どうしてはやく気づくことができなかったのだろう。
「澄美、もう、俺に触られることは怖くないか」
「怖くないです、安心します……っ」
私は、彼の胸に顔を押し付けながらそう答えた。
「稔海さんのそばが、1番安心します……っ」
一度手離してしまった彼に、私はしっかりと腕を絡めて抱きついた。
もう2度と、この人を手離したくない。そう思った。
「……じゃあずっと、そばにいればいい」
彼は掠れた声でそう囁き、私の額に額をくっつけた。
「……正直未練しかなかったよ、俺は」
「えっ、私にあんな啖呵切ってたの」
に、と続ける前に、唇を塞がれた。
キスをしたら、あなたの優しい秋の匂いに全身を包まれている気持ちになった。
――秋の夕日に照らさせた、絹糸のように細くて艶やかな髪がオレンジ色に淡く透けているのを見て、あまりの美しさになぜだか涙が出そうになったのを覚えている。
あなたは、秋の匂いがする。
あなたのケーブルニットの袖から、温かい首すじから、稲穂のようにふわふわとした髪の毛から、死ぬほど落ち着く優しい秋の匂いがする。
……あなたの指が漫画のページをめくる音を、これからはまた隣で聞けるのね。
秋は、読書の秋と言うけれど、ずっと漫画ばかり読んでいないで、たまには構ってね。
ねえ、そんなわがままを言ったら、あなたは困る?