Destiny



「格好いいし~、落ちついてるし~、オトナ!って感じでよくない!?」

「いや、そりゃまあ素敵な人だと思うけど…」

「とりあえずバーに通い詰めて仲良くなろうと思って!
ナナもあのバーテンくん狙うんでしょ? ちょうどいいじゃない! 常連目指すわよ!」

「狙うなんて、そんな…! わたしはただ、時々話せればそれで…」

「なぁに甘いこと言ってんのよ! せめて一回寝るくらいしないと!」


昼時のカフェテラスで、大声で言う台詞ではない。

周りの視線が一斉に集まって、「もう、芹…!」と小声で窘める。


「早速今夜出陣するわよ! しっかり化粧直ししときなさい!」


「じゃっ、あたし次の講義もあるから!」と、芹は立ち去ってしまった。


芹はいつも無鉄砲で、考えなしで、猪突猛進。

いつもいつも振り回されて、怒って、「ごめんね~!」って言われて、その繰り返し。

でも芹を嫌いになれないのは、振り回されても許せてしまうのは、消極的な菜々瀬の背中をいつも押してくれるから。

一回寝るなんてとんでもないけれど、せっかく会える距離にいるのに何もしないのはもったいないのかもしれない。


「…着替えよう!」


せめて、お洒落をしていかなければ。



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