恋の治療は腕の中で
帰りに悠文ともう一度医院長のいる病院へ行くと相変わらずコードで繋がれたままの医院長がベッドに力なく横たわっていた。


「医院長寝てるみたいだな。」


「うん。」

「紗和がそんな顔してたらダメだろ。」


額をペチッと優しく叩かれた。

「そうだよね。こんな顔見たら医院長心配しちゃうよね。」


私は精一杯笑って見せる。

「よしよし。」


今度は頭を優しく撫でてくれた。


「あっ、藤堂先生に望月さん。」


「今晩は。」

お手伝いさんの狭山さんが花瓶に入ったお花を持って病室に戻ってきた。


「今晩は。お疲れ様です。」

「医院長の様子はその後どうですか?」


「はい。夕飯を少し召し上がってお薬を飲んで今しがたお休みになりました。

起きてらっしゃる時は少しお話しもされてましたから少しはご気分も良くなったみたいです。」


「そうですか。あれから先生は診に来たんですか?」

「はい。一度診察してもらいました。

それで食事の方も許可がおりたんです。

明日カテーテルって言うんですか?その検査をするって言ってました。」


「でも良かったです。狭山さんがいてくれて。」

狭山さんは、大学病院の時に歯科衛生士として医院長と一緒に働いていた人で、奥様を亡くされて開業した時に大学病院を辞めて医院長のお手伝いとして働いてくれてる人だ。

「そんなこと。私がもう少し海老名先生の健康を考えてあげていればこんなことにはならなかったんです。」

狭山さんは申し訳なさそうに言っていたけど、決してそんな事はないと思う。

「医院長いつも言ってましたよ。狭山さんが居なかったら自分はとっくに餓死してるって。感謝してるとも言ってました。」

「海老名先生がそんなことを……。」


医院長が悠文にそんな事まで話してたなんて思いもしなかった。

「私達は、仕事があるので余り様子を見に来ることはできないですが、何かあれば何時でも言って下さい。」


「はい。ありがとうございます。」
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