3日限りのルームシェア
「・・・・あれは反則だろ~」
樹は敷きっぱなしの布団にねっ転がりながら
朝食での出来事を思い出していた。
しかも
『うわ~。それ反則だよ・・・』
といった時、知香の顔が真っ赤になった事もちゃんと
確認済みだ。
・・・・もしかして脈あり?
あともうひと押しかな?って・・・ひと押しも何も自分は何かした訳では
ない・・・
じゃあ・・・元々俺に気があったのか?
樹の勝手な妄想が暴走しそうになった。
その時だった
枕元のスマホが鳴った。
「誰だ?」
スマホの画面を見ると電話の相手は梓だった。
「もしもし」
「もしもーし、兄貴?お・は・よ・う!」
からかっているのか面白がってるのか・・どっちとも取れる様なそんな
挨拶だった。
「朝からなんだ?」
梓が電話をした理由などわかってはいるのだがトボケたくもなる。
妹に、知香がさ~なんて言えるわけがない。
「何か進展あった?」
「お前の言う進展ってのがよくわからん」
すると鼻で笑った様な息がスマホ越しからも聞こえた。
「兄貴の事だから、押し倒したなんて事は全く期待してないわよ」。
悔しいほどに自分の事をわかってる妹がある意味憎い。
「会話して、ご飯食べて・・・だけど・・・進展・・・・あったのかな?」
よくわからない答えに梓は深いため息をこぼす。
「別に、キスしたって報告なんて期待してないから。で?何?」
「俺と話してると時々顔が真っ赤になるんだよ。そこがかわいいというか
抱きしめたくなると言うか・・・」
兄が妹にここまで馬鹿正直に話すのもなんだかな?とは思う梓だが
知香が樹を見て顔を真っ赤にするっていうのは少なからず脈はあると梓は感じた。
「話しているだけでよね?手を握ったりとか、どこかに触れたりも・・・ない?」
「ない」
即答かよ!
時計は午前9時。梓は時刻を見てにやりと笑うと、
「ねー。どうせ暇なんでしょ?」
「暇といえば暇だけど・・・・」
何とも歯切れの悪い返事に梓は
「何かあるの?」
「これからどうやって知香との距離を縮めようか考えたいし・・?」
何?それ・・・アホじゃない?我が兄がここまでのヘタレとは・・・
梓の全身の力が抜けそうになった。
「じゃあー。今から知香を誘って外へ連れ出しなさい」
「連れ出す?」
「 そう!2人だけでだと知香が警戒するから・・・・そう!私と3人で会わない?」
「3人で?」
一体梓は何をたくらんでるんだ?
「そう。3人で会いましょう。兄貴たちの様子を見ればもっといいアドバイスが
出来るかもしれないし・・・ね!!」
やっぱりこいつは面白がっている。
俺と知香の様子を見られるのは恥ずかしいし
何とか自分の力で知香をものにしたいが時間がない・・
悔しいが、正直アドバイスもほしい。
樹は梓の提案に渋々だがイエスと答えた。

梓は10時に知香とよく行くカフェに来るように。
場所は知香が知っているからと声を弾ませ電話を切った。

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