3日限りのルームシェア
だがそんな知香の思いなど知らない樹は言葉を続けた。
「本当・・・俺さ・・その子の気を引こうとして間違ったアプローチしてたみたいで・・
あんまりいい印象もたれてないんだよね。」
その言葉に知香は、その子と自分が樹に対して同じように思っていたんだと気づく。
もちろんその子は知香本人なのだが知香はそんな事知る由もない。
「で・・・その好きな人とは今どんな感じなんですか?」
知香の言葉に樹は知香を見つめる。
「どうだろうね~。好きって言いたいけど・・どうも俺って本気の女の人に対してはヘタレなんだよ」
そういうと樹は砂浜に腰を下ろした。
知香もそれにつられて腰を下す。
「そうは見えませんよ」
樹は苦笑いをした。
「・・・・でも残念ながら本当の事、幻滅した?」
知香は首を横に振った。
「私の中での樹さんて、イケメンで完璧で何でも軽くこなすって
イメージが強かったから・・ちょっと意外と言うか・・・」
樹はフッと笑うと知香を見た。
「あーよかった。」
「え?」
何が良かったのかわからず首を傾けると
「知香ちゃんの俺のイメージが徐々によくなってきてるから・・・」
そう言ってこれでもかと言うほどの笑顔を見せるもんだから
知香は反則だ―と心の中で叫んだ。時計を見ると
午後1時を少し過ぎた頃だった。
「もうこんな時間なんだね。・・・ランチでも行く?」
樹が立ちあがると知香も立ち上がっておしりの砂を掃った。
知香は樹の想い人の事が気になりつつも笑顔を作った。
「樹さん。好きな人とうまくいくといいですね。」
知香の言葉に樹が微笑む。
「うん」
だが樹の本心は・・・
うまくいきたいよ!君とね!君と・・・そう心の中で呟いた。
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