3日限りのルームシェア
「ごめんなさい。今日は一人になって考えたいので
樹さんには申し訳ないですがホテルにでも泊っていただきませんか?
お預かりしていた家賃は…全額お返しします」
「知香!」
「知香ちゃん」
2人の声が重なった。

「知香・・ごめん。私が・・・兄貴と知香がうまくいってくれたらと思って・・・」
でも梓の思いは今の知香には届かず
「ごめん梓。帰るよ」

そして知香は一人店を出たのだった。
残された2人は出口を見つめることしかできずにいた。
「兄貴・・・ごめん。私が余計な事を言わなければ・・」
「梓・・いいよ。悪いのは俺なんだ。
人に何とかしてもらおうとした結果がこれだよ。
本当のヘタレだよ。」
「兄貴・・・・」
黙って聞いてたマスターが2人に冷たい水を差し出した。
「マスター」
「恋愛に小細工はいらない。好きなら好きってぶつかるしかないんだ。
おにいちゃん。まだ今なら間に合うんじゃないか?
ちゃんと1対1で隠し事なしで知香ちゃんと向きあいな。
・・・ホレ」
マスターが樹に車のキーを渡した。
「マスターこれ・・」
「帰すのはいつでもいいよ。自宅は裏だし」
マスターが自分の家の方を指さした。
梓は泣きそうな顔をしていた。
「梓。大丈夫、お前の親友はこんなことでお前の友達をやめたりしない。
お前は帰れ。旦那が待ってるぞ・・・」
梓は泣きそうな顔で頷いた。
樹は改めてマスターの方を向くと
「マスター車お借りします」
そういって店を出た。

「あずちゃん、大丈夫。あの2人なら…」そういって
マスターは梓の肩をポンと叩いた。
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