憎たらしいほど君が好き
まあ楽しもうぜ、真人がそう言って私から離れていく。


「─あ、待って…!」


口から零れたのは情けない、弱々しい声だった。


足がもつれ、カァンと派手な音を立てて転んだ。


ヒールなんだから当然だ。

「かす「霞!」

「かすみっ!?」


鋭く呼ぶ声は、真人じゃない。


夕陽と理彩。


自分を嘲笑った。

声をかける速さにまで一喜一憂するなんてバカみたい。


つくづくしょうもない人間だなぁと他人事のように思う私がいた。 


「何してるの、」

無駄なことは一切しない主義の夕陽は、無事を確認してから歩いて来た。


「転んだ」

「知ってる。あんたそんなんで一日過ごせるわけ?帰りなよ」

「来たばかりだし」


盛大な溜め息が頭上で聞こえる。

どうしてだか顔が上げられない。


「ほら行くよ」


差し出された手。


いつの間にか大きくなった手。


軽く掴んで立ち上がる。


自分で立てないわけではなかったが、なんとなく夕陽の優しさに甘えておきたかった。
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