ハコイリムスメ。
「なー、1人なんでしょ?」
「黙ってないでなんかしゃべってよ~」



野郎どもは女の子にこんな感じのことを言っているらしい。

逆に女の子は、何も言わないでうつむいている。




………で?


俺に、何をどうしろと?
あのバカたちを、追い払えばいいんでしょうか?
ねえ、店長。


「な、他のお客さんに迷惑なんだよな、これが。ぱぱっと頼む」
「……」


そんなにか弱そうな客がいるか?
おもしろげに取り囲んで見てるだけじゃん。


「別にほっといたって…」

そこまで言いかけて、思い当った。
この店長はものすごく気弱で、その上怖がりなのだ。つまり、自分が怖いから、どうにかしてくれってこと。

だったらこんな微妙な治安の場所の、ましてやゲーセンの店長なんかやるなよって話だよ。


この間にも女の子はろくでもない輩に言い寄られ続けている。
まあ、かくいう俺も十分ろくでもないのかもしれないけど。




俺が無言で睨むと、「さ、伝票整理!!」と、そそくさ奥に引っ込みやがった。
あれでもここの店長かよ。


もう一度ぼんやりと奴らを見る。

ほっといてもいーと思うけどな~。

だって、ただのちょっとタチ悪いナンパだろ?




あー…
いつものことだしな。

俺は割り切って、店長がいた場所に向かって「へいへい」と小さく呟いた。



まあいいか。
さっきの奴らよりは、手ごたえがありそうだし。こっちも、フラストレーション溜まってんだよ。

今のイライラが少しは解消されるんなら…

ひとまず1番背の高い、筋肉男の肩に手をかけた。





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