清掃員と経営者
朝帰りに気まずいながらも家へ帰ると誰も居ないので安堵する。瑠美は実家暮らしで家族は4人、父と母と兄と瑠美。
今回の退職については“契約満了”と家族に説明していた。
熱いシャワーでさっぱりした後、求人誌を眺めながら希望の会社をピックアップして電話を掛けようとバッグをあさる。
すると中から1枚の名刺が出てきた。
《ALB株式会社 秘書課:渡瀬 透》
裏にメッセージがかいてあった。
『仕事にお困りなら連絡下さい』
瑠美は頭を傾げながら考える。昨夜のスーツの男性だろうか。曖昧な記憶を辿りながら名刺を見つめる。
「電話するだけしてみるか…。」
手っ取り早く仕事が見つかるに越した事はないと考え名刺に記載されてる番号に連絡してみた。
『ALB株式会社でございます』
「お忙し所恐れ入ります、村上と申しますが渡瀬様はお手隙でございますか?」
『渡瀬ですね、お繋ぎしますお待ち下さい』
名刺の相手はどんな人物なのか不安もあり電話を持つ手が汗でしっとりしてくる。15秒程で男性の声が聞こえた。
『お電話替わりました、渡瀬でございます。』
「恐れ入ります村上と申しますが、昨夜名刺を頂いた件で不躾とは思いましたが、ご連絡させて頂きました。」
相手の顔は想像できないが、無理を承知でお願いするのであれば電話だろうと誠意を表さなければと話をしてみる。