清掃員と経営者
「宜しくお願いします。」

決意すると頭を下げた。
一瞬で瑠美の目つきが変わった事に気付いた渡瀬は、眼鏡のこめかみ部分を上げながら頷いた。


「ではお願いします。」


渡瀬は先程から会議室に居た清掃員2人に声を掛けると、立ち上がり紹介を始める。


「こちらは相田かなえさん。今日から村上さんの教育係を担当してくれます。」

「判らない事があれば何でも聞いて下さいね。宜しくお願いします。」


作業着を着ている割に上品さが漂う相田は、50歳代…いや40歳代だろうか、優しい眼差しで挨拶をしてきた。


「おはようございます。三田 茜です。私も先週入社したばかりです。宜しくお願いします。」


相田の隣の女性、三田は20代後半だろうか、作業着を見せるようにして嬉しそうに微笑んだ。


「村上 瑠美です。早くお役に立てるよう頑張りますので宜しくお願いします。」


3人の挨拶が終わると渡瀬は頷いてから「では私は業務に戻ります」と会議室を出て行った。

渡瀬を見送り着替えに向かう。研修期間中は更衣室と言うより、1階にある守衛室の隣が清掃員の部屋になる事を教えてもらった。


「村上さんは着替えたらこちらに目を通して下さいね。私と茜ちゃんはゴミ箱巡回に行ってきます。1時間程で戻りますので、何かあれば内線で私のピッチに連絡して下さい。」


そう伝えると2人は部屋を出て行った。
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