オオカミと少女
ナターシャはオオカミが走って行ったと言う道を1人で歩いていた。
警備団の男は自分も一緒に行くと言ったが、ミストを無事に夫の元に送り届けるようにお願いした。
それに、オオカミがイーサンなら1対1で会いたかったのも本音だ。
「この道って…高台に続く道だ…」
ナターシャはこの道に見覚えがあった。
イーサンと高台に来た時に通った道と同じだったのだ。
その記憶通り、しばらく進むとナターシャは高台の広場に出た。
そこは崖になっているため奥は行き止まりだった。
ナターシャが暗闇に目を凝らすと、高台の奥で何か影が動いたような気がした。
「イーサン?」
「くぅ~ん…」
「イーサン!?」
ナターシャはその影に駆け寄った。
そこには1匹のオオカミがいた。
どこか怪我をしているのか辺りは血だらけで、オオカミは小さくうずくまっている。
だいぶの出血量だった。
「大丈夫、大丈夫!私が助ける…!」
ナターシャは着ていたカーディガンを脱ぐと、それをやぶってオオカミの足に巻いた。
その間、オオカミはじっとナターシャの目を見つめている。
「イーサンよね?」
ナターシャはこのオオカミがイーサンだと確信していた。
それはその首に鍵のデザインのネックレスがかかっていたから。