オオカミと少女
「も〜!」
離した後苦しそうに肩で息をしながら胸を叩くナターシャに、イーサンはクスッと笑った。
体の熱はすっかり治まっていた。
呪いが解けたかどうか、イーサンに実感はなかった。
それは呪いがかかっていない人間の感覚が分からないからだ。
それでも心のどこかで、ずっと抱えていた重荷がふっと消えたような感覚はあった。
「ありがとう。」
もう一度、イーサンは小さな小さな声で呟いた。
でもナターシャはそれを聞き逃さなかった。
「もう動物のパン食べられるね!」
「あはは。しばらくは見たくないかも。」
イーサンの苦笑いにナターシャは申し訳なさそうな顔をした。
「そうよね。苦しかったよね。」
「でもナターシャが焼いたパンだったら、動物だろうがなんだろうが喜んで食べるよ。」
イーサンはナターシャの唇を親指でなぞりながら言った。
「あのパン難しいのよね…」
そう言ってため息をついたナターシャに、イーサンはもう1度キスをした。
たどたどしいながらもそれに答えてくれるナターシャをイーサンはまた抱きしめる。
(これからは、普通の人間として生きていけるんだな。
…ナターシャと一緒に。)
今までこれでもかというほど苦しんできたから幸せ過ぎて想像も出来ない。
(何があっても守るから。)
イーサンは心の中でそう誓った。