小さなキミと
『……じゃあ、田辺、のことは』


服部の口からは、かすれた声しか出なかった。


コイツは本当に、田辺の事を最初から好きじゃなかったんだ。


それが本人に伝わるくらい、コイツは露骨に態度で示していたのか。


『田辺くんって、いい人だったけど服部くんのこと全然教えてくれなかったよ?
話が合わないなって前から思ってたんだけど……』


何を勘違いしたんだか、この女は次々に田辺への不満を並べ始めた。



一体田辺は、こんなヤツのどこが良かったんだろう。


コイツは一見ただの地味めな女子だが、実際は腹黒で自分本位な女だったのだ。


女子はみんなそうなんだろうか。


教室にいる女子みんな、内心ではコイツみたいなことを考えているんだろうか。



と、服部は手に何かを感じて瞬時に引っこめた。


その女に触れられたのだと気付いた瞬間、全身に寒気が走った。


嫌悪感に耐えきれず、すぐさま学ランに手を擦りつけた。


何だコレ、めちゃくちゃ痒い……


見ると、自分のてのひらや甲、さらには前腕まで、表面の皮膚がボコボコと盛り上がって不気味な赤模様を作っていた。


服部が女子に触られて蕁麻疹が出たのは、この時が初めてだった。



目の前の女が、明らかに傷ついた顔をした。


大粒の涙をボロボロ流しっぱなしにし、服部の悲惨な手をチラチラ見ていた。


だけど服部は、もうこの女がどうなろうと、どうでも良かった。


『帰る……』


力の抜けた身体に鞭打って、服部は階段を下り始めた。



『服部くんっ、私服部くんは本気だからっ』


背中に女の声がまとわりついた気がして、服部はまた寒気を覚えた。


手に残った蕁麻疹は、いつまで経っても消えてくれなかった。

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