小さなキミと
「最悪ッ!」


そう叫んだあたしは、唇をかんで服部に背を向けた。


こみ上げてくる熱い涙を、必死に堪(こら)えた。


「どうせあたしは女じゃないですよ!」


どうしようもなくムカついて、皮肉ばかりが口をつく。


「可愛げもないし? 性格もひねくれてるし? なによりこんなにデカいもんねッ!」


違う。こんなことが言いたいんじゃない。

だけど自分ではもう止められない。


「んなこと言ってな」


「じゃあアレか? 服部はあたしを男だと思ってるワケ?」


服部が口を挟む隙を与えまいと、あたしは喋り続ける。


「服部この前、あたしに髪切れって言ったよね。バレーやるには長すぎるって。
なんで切らないか教えてあげようか」


こぼれてしまった涙を手の甲でグシグシと拭い、服部に向き直る。


「え、な、なんで泣いて……」


びっくりして目を丸くする服部へ詰め寄り、怒り口調でこう言った。


「髪長くしてないと男と間違われるからッ」


服部からカバンをふんだくり、「バァーーーーカッ」と力いっぱい叫ぶ。


我ながらダサい捨て台詞だけど、もうどうでもいい。


そのまま適当なところまで走って、結と連絡を取って、駅へ戻ろう。


5月下旬の夕方の空は、まだ十分明るい。


結がいなくても、スマホがあれば1人で帰れるわ。


あたしは早く1人になって、気持ちの整理がしたかった。

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