小さなキミと
心なしか、服部の顔がほんのり赤くなっているように見えた。


服部が……素直だ。

照れてるのか?


服部ってこんな顔もするんだな。


「しっかし、アレだね。女子が苦手で蕁麻疹が出るなんてさぁ。
漫画とかの世界のハナシだと思ってたけど、まさか実在したとはねー」


思わずこっちまで照れてしまって、それを誤魔化すように、話を変えてみる。

すると服部は、あたしの顔から目を背けたまま、言いにくそうに口を開いた。


「……剛、お前さ。化粧してるの忘れてない?」


あたしは、その言葉の意味を理解するのに数秒かかった。


化粧。

普段のあたしには無縁のワードである。


だがしかし、今日は違う。

駅で寺田たち筋肉3人組を見つけて、結にトイレに引っ張られて、彼女にされるがままに……


で、今、大泣きした。

その前に、全力疾走して汗を大量にかいたような気がする。


一気に血の気が引いて、クルリと無言で服部に背を向けしゃがみ込む。


あたしはカバンを漁って、掌(てのひら)サイズのコンパクトミラーを取り出した。

女子力はない方だけれども、これだけは常に持ち歩いているのだ。


ゴクリと唾を飲み込み、そーっと鏡を覗いてみる。


「うわぁ……オゥ……」


もともとそこまで濃い化粧はしていなかったのが幸いしてか、見るに堪えないほどではなかったけれど。


何度も擦ったせいで目の周りが黒く汚れ、若干パンダのようになっていた。

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