小さなキミと
「あっ、ちょっと待った、あたしの話を聞いて」


服部が今にも怒り出しそうな雰囲気だったので、あたしは慌てて口を開く。


「あたしは押し倒されたなんて言ってないからねっ、
きっと結が、勝手に言い換えたんじゃないかなぁ?」


そう言って、アハハッと笑ってみる。


あー、もう。

あんたのせいでそのことを思い出しちゃったじゃん、顔が熱いや。


「……あそ。つーか人に言うなよ、そんなん、いちいち」


ポツリと言った服部は、どこか不満げだった。


なんで?

喉まで出かかったその言葉を、寸でのところで飲み込んだ。


つまりは、嫌なんだ。

あたしとなんかと、そういう噂になるのが。


危ない危ない、無駄に傷つくところだった。

いや、もう既に傷ついたわ。


「……服部」


ため息を吐くように、静かに名前を呼んでみる。


「なに」


相変わらずの仏頂面で、服部はあたしを見上げた。


なんだかなぁ。

この身長差は悲しいよなぁ。


っていうか、なんであたしはこんな生意気でムカつくチビを好きになってしまったんだろう。

この仏頂面ですら愛しいと思ってしまうなんて、いよいよ重症だと思う。


“あたし、服部のことが好きなんだ”


そう言ったら、コイツは一体どんな顔をするんだろう。

フッと笑って、あたしは首を横に振る。


「あたし、そーゆう嘘は絶対につかないからね」


服部は少し面食らったようだった。

何か言おうと口を開いた服部を、「じゃーね」の一言で制すあたし。


ひらひらと手を振りながら、服部に背を向けて歩き出す。


恋って……けっこう辛いかも。

< 95 / 276 >

この作品をシェア

pagetop