マネー・ドール -人生の午後-
「真純」
「わっ。なんだ、起きてたの?」
「……コンビニ寄って」
「は?」
「トイレ……漏れそう……」
もう! 何それ! ……でも……
「はいはい。ガマンしてよ」
 慶太、ありがとう。やっぱりね、私、あなたが好き。そんなね、あなたが大好きなの。
「早く……ヤバイ……」
「ええ? もう……」
 運良くコンビニに遭遇して、慶太は必死で走って行った。
「間に合ったのかしら」
 そういえば、昔……こんなこと、あったよね。まだ、私が将吾の部屋で暮らしてた頃……ねえ、あの時、慶太……ほんとに、隣の部屋で寝ていたの? もしかして……
 しばらくして、コンビニの袋を持った慶太が、ふらふら歩いてきた。もう、よっぱらいのおじさんじゃん!
「あー、あぶなかった」
「何買ったの?」
「肉まん。はい、どうぞ」
 慶太は運転する私の代わりに、肉まんを二つに割って、カラシをつけてくれた。私たちは、ホカホカの肉まんを食べて、美味しいねって、笑って、家路につく。

「あのさあ、真純」
「何?」
「コンビニで……手、洗うの忘れてた」
ええ! さっき、さっき、私の肉まん……
「もう! 最低!」
「いいじゃん、夫婦なんだからさ」
「もう……お腹痛くなったら、慶太のせいだからね!」

 ねえ、慶太。私たち、やっと、やっとね、本当の夫婦に、なれたよね。
 慶太……ずっと、ずーっと、私たちは……愛し合っていようね。

< 223 / 224 >

この作品をシェア

pagetop