心も体も、寒いなら抱いてやる
母はベッドに横たわっていたが、みのりの姿を見つけると体を起こした。

「しんどいんでしょ。起きなくてもいいよ」

「大丈夫よ。それよりあなた、仕事忙しいんでしょ。毎日来てくれなくても大丈夫だから。なんかやせたんじゃない? ご飯ちゃんと作って食べてる?」

母親というのは自分ががんになっても子供の体の方が心配らしい。

「闘病の母親から心配されちゃうなんて、私ってどんだけ頼りないのよ。お母さんこそ大丈夫?」

「大丈夫だって」

とても大丈夫そうには見えないけれど、「よかった」とみのりは笑ってみせた。

部屋の外をガラガラガラガラとワゴンを引いて看護士が通り過ぎていく。

それ以外物音がしない静かな病室は、しんとしすぎてかえって落ち着かない。

「こんなに副作用がきついんだから、その分効いてくれなきゃ詐欺よ」

母が無理やり笑顔を作る。

「先生にそう言っておくよ」

手術まえにできるだけ腫瘍を小さくするために行っている抗がん剤治療だが、その効果は人それぞれらしい。

「でもたいていは効き目があるっていうから」

少しだけ嘘をくわえてみのりは母を励ました。
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