心も体も、寒いなら抱いてやる
「みのり」

声のする方に首を向ける間もなく、後ろから抱きしめられた。

かすかに香の香りがする。

みのりは首を後ろに傾け、喪服のまま自分の背中を抱いている俊をみとめる。

「俊くん、どうしたの?」と聞きながら、みのりはまた空を仰ぎ、桜に目を戻した。

風が冷たい。

花冷えの夜。

「桜を、桜を見にきたんだ」

「そう―――」

しばらくの間、2人とも何も言わずに桜を見つめていた。

風が吹き、花弁がひらひらと舞い、葉が揺れる。
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